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(2) 生きとし生けるものは,いつか死んでゆかねばならない。それが自然の摂理であり,誰ひとりとして異をとなえる者などいないことだろう。 人間にも終焉のときは必ずおとずれる。分からないのは,いつ,いかなる形でやってくるのか,ということ。 ある日,真実はひょっこり顔をのぞかせ,予期しながらも実感できなかった波紋を投げかける。 ここぞ果つべき・・・運命のトキなのか? 2010 年 3 月 19 日,金曜日。 相も変わらず,時間に追い立てられるように出勤した。 ・・・ことさら言い訳がましいことは口にはしたくないのだが,いくつになっても夜更かしというものは已められそうにない。というのも暗がりの中には汲み尽くせぬ泉が隠されていて,はからずも味わうコツをおぼえてしまうと苦痛であったものがしだいに快感へと変わり,やがては病みつきになって誘惑から逃れられなくなってしまうのだ。 むろんのこと,早起きは大の苦手であると,このさい打ち明けておきたい。 いつものようにドアノブをまわして施錠をたしかめる。それから振り向きざまにマンションの共用廊下を歩きだすと,柔らかな朝の日差しが斜めに射し込んでいた。 その春めいた光景を目にして奇妙な思いに捕らわれる。 『いつか,この眺めに出くわしたことがある・・・きっと,いつか・・・いつか,未来に?』 つい立ち止まり,目を凝らした。すると,急ぐあまり余裕のなかったこのオレに,やさしく囁いてくるみたいだった。 『ジタバタするなよ,ロクなことがおきないぜ!』 導かれるままに空を見上げる。まるで抜けるよう・・・西のほうにはいくらか雲が見うけられるものの,これほどみごとに澄みわたった蒼天を仰ぐのは,じつに何年ぶり?・・・いや十数年ぶりのことだろう。 今しがたの変な感覚のことも吹き飛んでしまうくらい,しばし清々しい心地になったのであった。 そのわりに日中になっても気温はさっぱり上がらない。 寒さがぶり返してイヤになるわ・・・ちらりと,だれかが仕事の合い間にこぼすのを小耳にはさんだ。 別にいいじゃないか,どうせ 二三日ぐらいのこと,ずっと続く わけでもあるまいし・・・そう...